Side 愛華


紺炉が帰国してから3ヶ月が経った。


私は今、最高の気分を味わっている。


紺炉が明らかに私のことを意識して様子を伺っているのだ。


騙しているようでちょっとだけ心が痛むけれど、美鈴ママの作戦は大成功だ。


それは紺炉が帰国する少し前。


私は久しぶりにARIAの美鈴ママに会いに行って、もうすぐ紺炉が帰ってくることを話した。


「素直に喜んじゃダメよ愛華ちゃん。あの頃はまだあなたも高校生だったから何も言わなかったけど、もうダメ!男っていうのはね、女の子が好き好きアピールし過ぎると『どうせ向こうからきてくれる』って怠けるし、つけあがる生き物なの。少しくらい駆け引きしないと。こっちの手のひらで踊らせるくらいのスタンスじゃなきゃダメよ!」


紺炉を迎えに行った時は何も考えずに素直に自分の気持ちを表に出す。


おそらく紺炉は、私がそのままのテンションで自分のところにくると思うところを逆手にとり、それ以降はあえて〝普通〟の対応をする。


それによって紺炉に「あれ?」という違和感と焦りが生まれる。


これこそが、美鈴ママの考えたシナリオだ。


まさかこんなに予想通りの反応をするとは思わなかったが、そろそろ紺炉が可哀想な気もしてきた。


私の方から話を切り出してあげよう。


頭の中でそんな計画を練っていると、珍しく休日に私のスマホが鳴った。


『お疲れ!急なんだけど、もし今晩予定なかったら同期で飲まない?』


研修のグループが一緒だった他部署の同期からの連絡だった。


配属が決まってからもこうして定期的に集まって情報交換やちょっとした仕事の愚痴大会をしている。


特別予定もなかったしやることもなかったから、私は参加することにした。