2014年 春 現在
Side 愛華


(かなめ)さんかなり(こた)えてましたよ。いい加減口くらい聞いてあげてもいいんじゃないすか?」


「絶対にイーーヤ!」


私はいま、犬飼(いぬかい)がこっそり持ってきてくれた夜食を一緒に食べている。


犬飼が握ってくれたおにぎりと、今日の夜ご飯の残りだ。


ちなみに、犬飼が言う〝要さん〟とは紺炉のこと。


「それにしても、犬飼っておにぎり握るのも上手なんだね」


「それは良かったです。そういえば、お嬢とは意外と一緒に料理とかしましたよね。要さんのケーキ作ったりとか」


そういえばそんなこともあった。


そもそも、紺炉という世話係がいながら、どうして犬飼がこんな風に世話を焼いてくれるのか。


あれは私が高校に入学した頃のことだった———。