白い菫が紫色に染まる時

「そう。僕の父親、「男は一家の大黒柱であれ。男は女を守らなければならない。」っていう考えの人で。それを僕は小さい頃から呪文のように言い聞かされてきたんだけど・・・・」

「でも、誰かを守ったり誰かを養ったりするほど、僕は立派な人間でもないし、自分の人生を生きるので精一杯だし・・。だから、そういう考えを持つ父親といるのが苦痛になって、家業は弟に継がせて、僕は東京の大学への進学を自分勝手に選んだ」

「まあ、向こうは僕がこんなこと思ってるの気づいてないだろうし、表面上の関係は良好なんだけどね。きっと、父親は東京で一流企業に入社して、家庭を持つことを僕に期待してる。多分、そのレールから外れたら、地元に呼び戻されて地元のご令嬢とお見合いさせられるかな」

「お見合いって・・・」

「今どき、そんなのあるんだって感じだよね」

初めて彼を見かけたときから、根拠もなく私と似ていると思っていたが、家庭環境にも似たような部分があったのか・・・。

「口に出さないだけで、色んな事情を抱えて、生きている人って多いのかな。東京には」
「うん。だから、自分勝手に生きても罰なんて当たらないよ。きっと」
「そうだね・・・うん。そうだよね、きっと」

私と蓮くんはそうして目を合わせて笑った。
その時の彼の表情はどこかすっきりした顔をしていた。
私もきっと同じような表情をしていただろう。
自分が一人で抱えていた悩みを言語化し、それを聞いてくれる人、理解してくれる人を見つけた喜びが私の中で溢れていた。

そろそろ、家に戻ろうと、ベンチから立ち上がり、お汁粉の缶を捨てようとした。

「あ、飲む前に振り忘れちゃった。底に小豆が溜まってる」
「あ、ほんとだ。僕も・・・・」

そして、私たちは小豆が残っている缶を捨てた。