白い菫が紫色に染まる時

「いいよ。僕はタートルネックのセーター着てるし、ジャンパーも首元までしまるから」

そう言って、彼は自分のジャンパーのチャックを上まで上げて見せた。

「ごめん、ありがとう」
「うん」   
                                
彼と雪の中でお汁粉を飲み、雪景色をじっと見つめていると、ふと誰にも言ったことがなかった心の内を話したくなった。
今日は自分の心の内をひけらかしても、許されるような気がしたのだ。
少し感傷的になっているのかもしれない、柄にもなく。
        
「ごめん、急に変な話してもいい?聞いてくれるだけでいいから」
「・・・・うん、いいよ」

彼は、一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、優しい真摯な瞳でこちらを見つめた。
私は深呼吸して話し始めた。

「私ね、父親が苦手で、だから、その父親がいる場所、地元も好きじゃなくて。早くあの場所から離れたくて、大学は東京を選んだんだよね・・・」

「地元って北海道だよね」

「うん。だから、雪を見ると地元の事を色々思い出しちゃって。なんか、今日はやたらとナイーブになってるというか。普段、考えないようなこと、改めて考えたり」

「例えば、本当に私がしたこっちに来るって選択は合ってたのかなとか。あの場所にある記憶と縁を切りたい一心で、勢いで自分勝手にこっちに来ちゃったから」

「じゃあ、今は誰とも連絡すら取ってないの?」

「うん。私、夏に携帯壊したのをいい事に、全部繋がり消しちゃって。一回、母親には元気でやってます、心配しないでねって手紙を送ったけど、それ以外は。本当に自分勝手なことして迷惑かけてるだろうな」

そこまで話して私は、一息ついた。
蓮くんがこんなことを急に話し始めた私をどう思っているのか今更不安になり、隣にいる彼に目を合わせられず、私は自分の手の中にあるお汁粉をただ見つめていた。

暫く無言の時間が続いた。

数秒の無言の時間が私には長く感じた。
その無言を蓮くんの言葉が破った。

「別に、自分勝手でもいいんじゃないかな。我慢して誰かのために生きて後悔するよりも、自分勝手に自分のために生きる方がいいんじゃないかなって、僕は思ってる」

彼はゆっくり言葉を慎重に選びながら紡いでいるようだった。

「自分のために?」

「うん。自分のために・・・・。僕もさ、菫と同じで地元から逃げてきたようなもんなんだよね。まあ、地元っていうか父親の呪いの言葉からって言うのが正確なんだけど」

「お父さん?」