白い菫が紫色に染まる時

「ちょっと待って。どこで雪合戦やるの?いつもの公園?」

少し歩いた陽翔が振り返って、疑問そうな顔を浮かべた。

「えっと・・・、白澄。どこで雪合戦やるつもりなの?」

陽翔のその発言に対して、一斉に笑いが起こった。陽翔はクラスでもリーダーシップを取るタイプで、皆から頼られるような存在であるのに、たまに天然な一面を見せる。そこが彼の良い所でもあるのだが。

「勝手に張り切って、歩き始めるなよ」

恥ずかしかったのか、少し頬を赤らめながら、先ほど一人で歩いた道を戻ってきた。

「なんだよ。白澄が早く動かないのが悪いんだよ」

この陽翔の失態で、久しぶりの再会に照れていた日向の緊張もほぐれたみたいだ。

「陽翔、相変わらずバカだね」

その証拠に昔のように、陽翔をいじり始めた。

「何だと、日向~」

と言って日向の頬を軽くつまんだ。日向が昔の調子に戻って陽翔は嬉しそうだった。

「穴場な良い場所を見つけたんだ。それに、近くに室内で休憩できる場所もあるし」
それなら、私にとっては安心だ。
「休憩できる場所、わざわざね・・・」  
               
陽翔が意味深な目で白澄を見ている。

「なんだよ。早速行くぞ。そんなに遠くないから」

白澄と双子の弟たちを先頭に、私と陽翔で日向を挟み白澄たちの後ろを歩き始めた。
白澄が言うには、彼の父親が経営するチーズ工場に行く途中、いつもの道が工事中で他の道を使った時に、その場所を見つけたらしい。

「着いた!」

なだらかな斜面を歩き続けて、十五分ほどだった。
木々に囲まれた一本道を抜けると、一面に真っ白の雪景色が広がっていた。
誰も足を踏み入れていないのだろう。黒い点が一つとしてない。丘の上にこんな景色があったなんて。

「すごい・・・・」

感嘆のため息とともに、私の口から白い煙が吐き出される。
生まれた時から、この場所にいたのに、こんなに綺麗な冬の景色を見たことがなかった。

「こんな場所あったんだね。知らなかった」
「俺も、いつも使っている道が工事してなかったら、一生知らなかったと思う」

あまりの純粋な白さに見とれて立ち止まっていた。
そんな中、景色にはさほど興味のない雪成、雪哉と陽翔が早速走り出して雪を投げ合い始めた。
汚れのなかった真っ白な景色に足跡が続々と増え始める。
日向も遅れまいと陽翔を追いかけて行った。