白い菫が紫色に染まる時

「ちょっと~、無事で良かった!ラインが既読にすらならないから心配だったんだよ。菫、一人暮らしだしさ・・。何かあったのかなって。だから、菫の家に行こうと思ったんだけど、どこに住んでいるのかわからないし・・・・」

そんな風に少し怒っている久しぶりに会った彼女の肌は健康的な色に焼けていた。
彼女の夏休みはきっと部活に打ち込んでいたのだろう。

「あの日、一緒にご飯行った日に携帯壊れたじゃん。それでデータ全部消えちゃったの。本当にごめん」
「なんだ~。良かった」

心配してくれていたようだ。
連絡手段がないと、親しい人とも簡単に縁が切れてしまう。
会えなくなってしまうものなのだなと、私は事の大きさを改めて実感していた。

その日は、授業が終わった後、久しぶりに紅葉と昼ご飯を食べることになった。
今日は新しいラーメン屋を開拓することになり、まだ行ったことのないラーメン屋に入る。

「ここのラーメン、いつものところより好きかも!!」

彼女はラーメンを食べて目を輝かせた。

「私は、いつものラーメン屋の方が好きかな・・・。安くて替え玉無料だし。味は確かにこっちだけど」
「あ~、菫はそう言うと思った。あっちの店の方が菫の好きな野菜モリモリだもんね」 
           
というよりも、私は基本、冒険できない人なのだ。
ミスドに行ったら、他の商品が気になりつつも、毎回エンゼルクリームを買うし、サーティーワンではジャモカコーヒーとストロベリーチーズケーキしか食べたことがない。
一つ最高なものに巡り合うと、失敗を恐れて、他に手を出すのが億劫になるのだ。
今日も紅葉に言われなかったら、いつもと違うラーメン屋に入ろうなんて思いもしなかったはずだ。

「あのさ、菫に相談したいことがあって・・・。それで夏休みに電話したんだけどね」

突然、話を切り出した彼女はいつもより深刻な表情をしている。
よっぽど、大事な相談なのだろうと思い、私は一度ラーメンを食べている手を止める。

「相談って?」
「夏休み入る前にさ、菫が携帯壊した日。一緒にご飯会参加したじゃん・・。そこでね、連絡先交換した人のうちの一人からデートに誘われて・・・・」
「デート?気の合う男子いなかったって言ってなかったっけ?」
「言ったよ。言ったけど、誘われたら嬉しいじゃん。それで、デートに何回か行って、付き合うことになったの」
「え?いつ付き合ったの?出会ってから付き合うまで速くない?」