白い菫が紫色に染まる時

話に更けていたら、夕方になりいつまでもお邪魔しているわけにはいかないので解散することにした。
時刻は十七時だ。今なら、まだ携帯ショップも開いている。

「じゃあ、じいさん。またな」
「お邪魔しました」
「今日はありがとうございました」

各々が挨拶をして、狭い玄関で靴を順番に履く。
楓さんが履き終わり、私がサンダルに足を通して、彼に続き玄関を出ようとした時、楓さんの携帯が鳴った。
そして、楓さんは電話に出るために、立ち止まったので玄関の出口が塞がれてしまった。

「もしもし」

電話からは女性の声が漏れて聞こえてきた。この距離だと、きっと、私だけでなく、後ろにいる蓮くんにも聞こえている。

「あ~、ごめんごめん。今から行くわ。うん、うん。はいはい。俺も好きだよ」     

恥ずかしげもなく、予想外の言葉が突然聞こえたので、気まずい気持ちになり彼の背中から目を逸らす。
やはり女性関係に関しては想像通り軽い人のようだ。良い人ではあるけれど。

「じゃあ、またな」

電話を終えた楓さんは走って玄関から飛び出して行った。

「とりあえず、僕たちも玄関を出ましょう」
「あ、そうですね」

固まっている私に蓮くんが声をかけた。
もう一度、桃李さんに挨拶をしてドアを閉めた。
玄関から出て各自の家まで何か会話するほどの道のりもなく、私は自分の家のドアの前へ蓮くんは階段を上る。
私は、別れる前に気になっていたことを聞いてみることにした。

「あの!」

彼が上から覗いてくる。

「何で、嘘ついたんですか?」

さっきの会話のことだ。
授業が同じだったのは嘘ではないが、グループが同じになったことなどないし、会話も今日までしたことがなかった。

「あの、そもそも、何で私のこと知ってたんですか?」

私は自分より少し上にいる彼の目を見つめて尋ねた。

「菫さんこそ、何で僕のこと知ってたんですか?」
「え?」

それは不意をつく質問だった。
私の事を知っている理由を彼に聞いたら、同じ質問が自分にも返ってくるということまで想定できていなかった。
自分で自分を追い込むような形になってしまった。
戸惑っている私を見て彼は微笑みながら話を続けた。

「菫さん、その理由を楓さんに言いたくなさそうにしていたから。まあ、僕もそうだったんですけど・・・・。だから、咄嗟に嘘をつきました。すいません、勝手に」