白い菫が紫色に染まる時

そして、放課後。
私は手袋に白いマフラーにスノーブーツと完全装備姿で家を出た。
多くの人に何度も踏みしめられ、歩きやすくなっている道を選び、私も同様に踏みしめながら白澄の家の前まで赴くと、そこには陽翔がいた。
陽翔はいつもより厚手な格好をしているように見える。

「え、何でいるの?」
「俺も白澄に呼ばれたんだよ。俺がいるって聞いてない?」
「うん。聞いてなかった」

私と白澄はメモ用紙でやり取りだったので、今日のことについて必要最低限の情報しか知らない。

「え、じゃあ今日何をするのかとかも聞いてない?」
「何も聞いてない。白澄が秘密ってもったいぶるから」 

すると、彼はどこか納得したような顔をした。

「だよな。今日、菫もいるって聞いて、珍しいと思ったんだよ。そういうことか」
「え、どういうこと?」
「あいつがまだ言ってないなら、俺からは何も言えない」

別にそんなこと気にせずに言ってしまえばいいのにと思ったが、陽翔はこういうところ律儀な人なのだ。
教えてもらえそうにはない。
どうせ、もうすぐわかることだし、そこまで今は問い詰める必要もないかと思い諦めた。

ちょうどその時、目の前にある家の扉がガラガラと音を立てて開いた。
開いた扉の先には白澄と白澄の弟妹達がいた。

「ごめん。待たせたな」

白澄には小学生高学年の双子の弟二人と中学生の妹一人がいる。
少子高齢化と言われているこの時代には珍しい四人兄弟である。
扉が開くのと同時に、妹の日向はきらきらとした目で私のもとに駆け寄ってきた。  

「久しぶりだね。菫お姉ちゃん」
「わ~、久しぶり」     

と言いながら、こちらに走ってきた日向を受け止める形で抱きしめた。
見ないうちに成長しているが、人懐っこいところは変わらない。
私は一人っ子なので、日向とは本当の妹のように接していたし、高校生になる前は、よく白澄の家に行って一緒に遊んでいた。

「よっ。日向。俺もいるぞ」

私の方へ一目散に走ってきた日向に向かって陽翔が声をかけるが、日向は頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。

「え~、日向。しばらく、会わない間に俺のこと嫌いになっちゃった?」

陽翔はこの仕草が日向の照れ隠しであることをわかっているのだろう。
そっぽを向かれたが、さほど傷ついてはいないようだった。
白澄は双子の弟にスノーブーツを履かせ、二人を引き連れて、玄関から外に出てきた。