白い菫が紫色に染まる時

「何、食べます?というか食材どうします?あ、そもそもキッチン勝手に使ったらまずいか・・・」

ご飯を食べることになったのはいいものの、勝手にここの冷蔵庫の食材を漁って、料理するわけにはいかない。
どうしようかと悩んでいるところで、蓮さんが「あの、ちょうど昨日、実家から食材が沢山届いて。ちょっと、待っていてください」と言って、外へ出て行った。

そして一分も経たないうちに、ビニール袋を片手に持って戻ってきた。

「実家から、大量にそうめんが届いたんです。一人で食べきれないので良かったら・・」

そうめんか・・・。
良いな、夏っぽい。

「おお、良いじゃん。みんなで食べるには持ってこいだな」

楓さんも嬉しそうにしていた。

「あ、あと桃李さんに聞いたら、冷蔵庫にあるものもキッチンも自由に使って良いって言ってました」
「あ、ほんとですか。聞いてきてくれて、ありがとうございます。じゃあ、早速作りますね」

私は彼からそうめんを受け取り、キッチンに立った。
私は不器用で料理も苦手だったけれど、東京に出てからは、簡単なものはできるようになった。
実家にいる時は冷凍食品に頼っていて自分で料理するなんて無理だと思っていたが、一人暮らしを始めて数か月も経てば、そこそこ、こなせるようになるようだ。

そもそも、料理しなきゃ生きていけないし・・・。

人間の生存本能だ。
私が鍋を出し、水を入れて、火を点けた時に後ろから声をかけられた。

「菫さん。僕もやりますよ。そんなに任せたら悪いですし」

蓮さんは一緒に作ろうとしてくれているみたいだ。

「え、いいですよ。蓮さんは食材を持ってきてくれたんですから。蓮さんのそうめんと私の料理する労力で等価交換です。でも・・・、」

私は縁側で庭を見ながら、まるで自分の家かのように寝転がっている楓さんを見た。

「このままだと、楓さんの分はなしですかね~」
「え?」

彼は驚いて、こちらを振り返った。 
   
「何で?」

起き上がり、焦るようにこちらに駆け寄ってくる。

「だって、何もしてないじゃないですか。無償で他人から料理を恵んでもらえるなんて贅沢ですよ。楓さんも手伝ってください」

そう言うと、彼はケチだな~と文句を言いながらも、キッチンに立った。
楓さんは思っていたほど怖い人ではないことが、話してみてわかった。
そして、意外に話しやすい。