白い菫が紫色に染まる時

右側から視線を感じたが、私は何故かそちらに目を合わせることができず、花火をじっと見ていた。
一つ、一つ上がっていた花火が最後、連続に一気に上がり始めた後、辺りは静寂に包まれた。

「今年の花火も良かったな」

陽翔がベンチから立ち上がり、満足そうに言った。それに合わせて私たちも立ち上がり、空になったプラスティックケースやチョコバナナの棒をビニール袋にまとめ、近くのゴミ箱に捨てた。あんなにパーティーみたいに賑やかだったのに、もう花火も祭りっぽい食べ物もなくなってしまった。
パーティーの片付けが終わり、後はそれぞれ家に帰る。

「楽しかったね。今日はありがとう」

静寂に包まれた住宅街に私たちの声と私の下駄の音だけが響く。

「また、受験終わったら遊ぼうな」
「うん」
「俺、夏休み中にチーズ工場に顔出しに行くからさ。だから、白澄も頑張れよ」
「私も行くよ」
「あそこは勉強の休憩所じゃないぞ」

楽しい。いつもの何てことない会話がやけに楽しく感じる。

「じゃあ、俺はここで」

十字路に差し掛かり、陽翔は右に曲がる。

私と白澄はここを真っ直ぐ進まなければならない。
十字路で立ち止まり、陽翔が見えなくなるまで手を降った。

「あいつ、どんな時でも楽しそうだよな。一緒にいると元気になる」  
「そうだね~。大人になっても絶対あのままの性格だよ。永遠に変わらないと思う」   
 
私と白澄はそんないつでも陽気で明るい彼が見えなくなったのを確認して、やっと歩き出した。           
夜の住宅街には滅多に車は通らない。
だから、白線から少しはみ出しながらも隣に並んで歩く。
白澄は浴衣で歩くのが遅い私にスピードを合わせてくれている。
いつも相手のことを気にかけてくれる優しい人だ。
陽翔が誰に対しても元気を振りまくタイプだとするのなら、白澄は誰に対しても優しさを振りまくタイプだと思う。

一緒にもんじゃ焼きを食べていて、最後の方に少し残ったら、必ず相手に譲るような人だし、ミスタードーナツに並んでいて期間限定のドーナツが自分で最後になってしまった時は、後ろの子供に譲るような人だ。

だから、きっと彼は私のことを気遣って、先ほど心の中で思ったことを言えずにいる。
長年、一緒にいるから私にはわかる。

「ごめんね。大学のこと何も言ってなくて。驚いたでしょ。もっと早くに言えば良かったね」