力のない聖女は騎士と吸血鬼に愛される

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 ペースを合わせて歩いてくれる真守を隣にして、私は足をひょこひょこしながら自分の教室に戻ろうとしていた。



「あ、月森くん」



 廊下でジュースを飲んでいる月森くんに遭遇した。

 紙パックにはトマトの絵が描かれていた。



「よっ、由比加。けがは大丈夫か」

「うん。月森くん。すぐに消毒しようとしてくれてありがとう」



 私は体育の授業の月森くんの行動を思い出して、嬉しさに思わず笑顔になる。

 月森くんはトマトジュースのストローから口を離さずに、じーっと私を見た。



「月森くん?」

「やばい。素直できゅんと来た」



 温かくて重たいものが私の頭を撫でた。

 私は何をされたか分からずに呆然としていた。

 あ……今、月森くんに頭を撫でられている??

 気が付いて、私の顔がカーッと熱くなる。



「もう、からかわないでよっ」

「からかってない。由比加……俺のものにならないか」



 月森くんは意地悪く微笑んだ。その口には尖った八重歯が覗いている。



「俺がお前を守ってやるよ」



 私はどう答えたらいいか分からず、しどろもどろになる。

 肩をぐいっと横に引かれた。

 真守が私を抱き寄せている。



「悪いけど。由比加を守るのは俺の仕事なんで」

「へー、俺じゃダメなの?」

「ダメ。俺がいる」



 な、なんか火花がバチバチしている気がするんですが、気のせいでしょうか??

 始業のチャイムが鳴るまで二人のにらみ合いは続いたのだった。