力のない聖女は騎士と吸血鬼に愛される

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 で、も。

 そんなに簡単に忘れることなんてできません。

 聖女二日目。私は授業に全然身が入らず、天井を見上げていた。

 ここが月森くんの寝床かぁ……。

 四角いタイルの連なりと電灯を眺める。

 すごく寝づらいと思うんだけど、それがいいのかな。

 夏は虫が寄ってきそうだけれど……。

 前方の月森くんを見ると、疲れを見せない様子でノートを取っていた。

 うーん、昨日のことはまるで夢だったみたい。

 それから、少しだけ後ろの真守を振り返る。

 気づいた真守が、呆れた顔をしながら、ジェスチャーで私に前を向くように指示する。

 いつもの真守だ。

 やっぱり夢だったのかなぁ。

 私は制服のスカート越しに、ホルスターを撫でる。

 ナイフは私の手元にあった。

 夢じゃないんだなぁ。

 授業終了の合図を告げるチャイムが鳴った。



「それじゃ、今日のノートは回収するから後ろから前に集めてねー」



 えぇっ、全然ノート取ってないんだけどっ!

 それでも無情に私のノートは回収されていく。

 ……ノートが戻ってきたら、真守に写させてもらおう。

 真守なら笑いながら「しょうがない」って見せてくれるはずだ。

 次の授業はと言えば……体育。

 太ももにはナイフ。

 着替え、どうしよう。