力のない聖女は騎士と吸血鬼に愛される

 ***

 エレベーターに乗って。八階に着いて。



「由比加!?」



 私の家の前には真守がいた。



「どこ行ってたんだ、心配したんだぞ!」



「ごめん、ちょっと学校まで……でも、大丈夫だった!」



 月森くんがいたから。と、真守に紹介しようとしたところ、いつの間にか月森くんは姿を消していた。



「学校に行くなら、連絡くらい寄こせよ。メッセージ、全然既読にならなかったんだけど」

「あ……ごめん、マナーモードにしてた」



 スマホを見ると真守からの着信履歴とメッセージがそれぞれ十回以上送られてきていた。

 真守、そんなに心配してくれていたんだ。



「はー……とにかく、良かった。初日から不安にさせるなよ……」



 真守は、私の肩に腕を回し、私の身体を抱きしめた。



「守るって言って、守れないの。かっこ悪いだろ」

「ご、ごめん……」



 真守は黙ったままぎゅっと私を抱きしめる。

 いつの間にか真守も男の子になっていたみたいで、大きな身体が私の身体を引き上げるようにして包み込んでいた。

 その事実に、ちょっとだけむず痒くなる。

 ただの幼馴染だったはずの真守が、少しだけ遠い存在になったような。

 それでいて、ちょっと近すぎると感じるような。

 真守の鼓動が真守を支える私の手のひらに伝わる。

 早いのか遅いのかはわからないけれど。



「あれ、ちょっと待って……」



「ひゃいっ……!?」



 真守が私の首筋を撫でた。

 思わず変な声が出る。



「この二つの赤い点は何?」



 そこは。

 月森くんに食まれた跡だった。

 どうする? 正直に言っちゃおうか?

 でも、ダメだ。月森くんが吸血鬼だってバレちちゃう。

 寝惚けていたとはいえ、私に襲いかかったなんて知ったら、真守は黙ってない。



「え、えー? 蚊に食われちゃったかな。じゃ、私帰るから! また明日ね!」



 真守の身体を押しのけると、私は家へと帰った。

 お父さんとお母さんはすっごく心配してくれていた。

 私は何も言わずに家を出てしまったことを申し訳なく思った。

 二人は、銀のナイフをしまうホルスターを用意してくれた。

 これにナイフを納めて、太ももに巻き付けて、持ち運ぶらしい。

 今度から出かけるときはきちんとつけるようにと、念を押された。

 どうせならもっと可愛いデザインだったらよかったんだけどな。……っていうのも変か。