力のない聖女は騎士と吸血鬼に愛される

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 結局。私は、真守から指輪を『借りる』ことにした。

 高校を卒業するまでは返事を待ってほしいと伝えて。

 学校ではアクセサリーが禁止されているから、人に見られないように革紐に結び付けてネックレスにして、制服の中に隠すように首からぶら下げている。

 月森くんは、私が指輪を持っているのが分かるらしく、私に出会うと胸元を嫌な目で見る(いやらしい目じゃないよ!)。



「その指輪を持っているってことは、俺はフラれたわけ?」

「え、と、そういうわけじゃなくて」

「曖昧な返事をして、期待させるだけ期待させるなよ」



 月森くんは不機嫌そうに口を尖らせた。

 その目は少し寂しそうだった。



「残念だったな、月森」



 真守が私の隣に立ってにやりと笑った。



「由比加は俺のものだ」

「待って、真守。指輪は借りているけど……私は真守のものになったわけじゃないからっ!」



 私が反論すると、月森くんが愉快そうに真守を見た。



「古谷は都合のいい男だな」

「なっ!」



 月森くんに茶化されて、怒った真守が顔を赤くさせる。

 私も半分悪いところがあるから、申し訳なく思う。



「剣術の練習をして、自分で自分を守れるようになったら返すって約束。ちゃんと、守るからね」

「俺としては、そのまま指輪を受け取ってほしいんだけれど……」



 ぼそっと真守が呟く。



「二人への返事は、まだ待っていてほしいの。私、しっかり二人のことを考えて決めたいから」

「そういう素直な由比加だから、俺は好きなんだ。俺は待つ」



 月森くんが私の頭を優しく撫でた。



「俺だって、真剣に将来のことを考えられる由比加が好きだよ」



 真守が私の頬を撫でる。



「……ま、待つのと惚れさせるの、どっちが早いかだよな」



 月森くんが意地悪そうに八重歯を覗かせた。



「なあ、古谷。どっちが先に由比加を落とせるか勝負しないか」

「奇遇だな。俺もそうしたいと思っていた」

「へっ!? それってどういう……」

「「こういうこと」」



 月森くんが私の額に、真守が私の頬に、それぞれ唇を落とした。

 二人の柔らかな感触と、男の子の体温が伝わってくる……。



「ちょ、ちょっと二人ともっ。待ってよ」

「待ってやらねー」

「早く俺のものになれよ、由比加」



 二人の熱い眼差しに、私は言葉を失った。

 そんなとき、廊下の向こうから担任の先生が私を呼んだ



「浅灘ー、お前が校則で禁止されているアクセサリーを付けているって情報が入ったんだが、本当か?」



 私たち三人は目を合わせた。



「え、どうしよう。真守。もしかして、首から革紐見えてる?」



 私は声を潜める。



「見えてないけれど……」

「もしかして、俺と同じように指輪の存在が分かる魔の者が、学校にいるってことじゃないか」

「冗談でしょ」



 二人は目を見合わせた。



「「……冗談じゃないかも」」



 真守と月森くんは声を揃えた。



「浅灘、付けてるのか、付けてないのか」

「ええっと、付けてませーん!」



 とりあえず、嘘をついて先生をやり過ごす。

 先生は、「そうかー」と言って引っ込んでいった。



「……由比加、やっぱり俺の眷属にならないか。指輪なんてもん無くても安全が保障されるぞ」



 ごくり。

 どうしよう。月森くんの申し出がとてもありがたいものに感じる。



「眷属になったって、自分まで吸血鬼になるわけじゃないよね?」

「ああ。俺の匂いを付けるだけでいい」

「それなら……」

「ダメだ、ダメだ、由比加。お前を月森には渡せない。……俺が、渡したくない。大体眷属にする手段だってどういうものかも分からないだろ」



 そういえば。眷属になる方法って聞いたことがなかったな。



「眷属になるって、どうすればいいの?」

「興味を持つな、由比加っ」

「……愛し合う必要がある」



 ポツリと月森くんが言った。その表情はどこか恥ずかしそうだ。

 なぜか真守までもが顔を赤くしている。

 私は愛について考えてみた。



「愛し合う……か、それなら月森くんとは友達だから、月森くんの眷属にはなれないね」



 私が残念がってため息を吐くと、二人はそれぞれ手で顔を覆った。



「やっぱり、ガキ」

「由比加……俺でもそれはないと思うぞ」

「え、えっ。どういうこと?」

「俺の彼女になったら教えてやるよ」

「その前に俺の妻になる」

「いい度胸だな?」



 私を挟んで二人がバチバチと火花を散らす。

 こんな日常が、卒業まで続くんだろうか。

 それとも、私がどっちかを選ぶ?



「頭痛がしてきた……」

「いけない、保健室に行こう」

「俺が運んでやるっ」



 ええーっ。頭痛の種が増してきた。



「大丈夫、気のせいだったからっ!」



 二人はまたいがみ合う。今はまだこの光景を見ているだけでいいかな。

 でも、もし、卒業までの間に私が二人のどちらかに恋に落ちてしまったら、その時は……。

 私は顔が火照るのを感じた。

「由比加」

「俺が」

「俺が」

「「お前を守ってやる」」



 これからの私の生活は一体どうなってしまうのでしょーか⁇