警告音が頭の中でなる

ログインしたまま寝落ちしたらしい

時計は3:00をすぎている

このまま朝まで寝ていたい気がする

仮想空間の方が居心地がいい

本来あるべき感覚がいくつか欠落している

例えば重力といえばいいだろうか?

体が軽く感じる

それと温度と湿度が基本的に一定になっている

においは設定されていなければ無臭

空間は完全な無音状態ではなく適度な暗騒音が存在している

音楽でもかけていないと空間に埋もれてしまいそうになる

再現性の低い不完全な空間が逆に居心地がいいらしい

AIに頼んだデータの整理は終わっていた

私の管轄は体に障害がある人が仮想空間で過ごすためのテストということになっている

どちらかといえばカウンセリングをしながらログインしないと

ログアウトしたあとに現実に嫌悪感を示して取り返しのつかない状況になる

私が開発にかかわる前の話だが

ほとんど体の動かせない人を実験的に仮想空間に連れてきた時に

現実にもどりたくないといって仮想空間のなかで自分を消去した

これが問題になって仮想空間に入れる基準は複雑になっているが

普通の人でもその可能性はある・・・

・・・そんな関連の報告がいくつか

携帯端末を起動させる

空間に画面を表示さてログアウトする

現実の入れ物に戻る

体が重たく感じる・・・重力を感じたような気分になる

冷蔵庫から水のペットボトルをだして開ける

仮想空間のビールは現実の体には影響がない

気分の問題だろう

未成年やアルコールの依存症の患者を仮想空間に入れた時どう規制するのだろうか

下着が濡れている

向こう側でオナニーをして濡れるとこちら側でも濡れる

たぶん潮を吹くとこちらでも吹いてしまうのだろう

まぁ、排泄の注意を促しているのだから・・・

・・・男性が仮想空間でいくと現実側でも射精するらしいが

濡れたのと同じなのだろう

それにしても現実に戻って後片付けをするのは虚しさがある

シャワーを浴びてベッドにはいる

私以上に妹は仮想空間に期待をしているのかもしれない

そんなことを考えながら目を閉じる

---

目が覚める

今日は・・・休みだったな

体を起こしてコーヒーを入れる

端末を操作して空間に画面を浮かばせる

ニュースを表示させて適当に閲覧する

音楽をかける

仮想空間の中のほうがハイテクになっているから仕事はやりやすい

まぁ、事務処理に限られるのだけれど

妹にメッセージを送る

今日の予定を確認する

お昼から仮想空間に行くらしい

ホストとして店員をしている時はシステムの監視がつくけれど

自由行動をするとなると保護者の監視が必要になる

夜までは必要ないだろう

彼女の場合は仕事として仮想空間にログインしているので

1日に8時間までは滞在することができる

1回のログイン時間は3時間までというのは同じ設定になっている

これは変えることはできないらしい

システムに強制ログアウトされるとペナルティがつく

開発者側には関係ないけれど依存する可能性が高い

今日は散歩でもしようかな・・・現実の世界で買い物にでも出かけようか・・・

そうだ、ビールでも買って・・・いまだにビールの何がおいしいのか理解できないまま飲んでいる

季節的にもおいしく感じてしまうのはなぜだろう?

今日の夜は妹の監視だしまじめに見られても嫌だろうからな・・・飲みながらで・・・

監視の時は私も向こう側にいてもいいけどな・・・

どうでもいい事を考えながら