でも・・・両親は五歳の時に亡くなっていて


混乱する私に近付いたその人は


「ごめん」と目の前で膝をついた


「・・・あ、の」


絞り出した声が音にならずに震える


「花恋ちゃん驚かせてごめんね」


肯定も否定も聞こえない中、口を開いたのは向日葵さんのお父さんだった


なぜ、どうしてが巡り
導き出されない答えを待っている私に手渡されたのは古い写真


「・・・、これ」


若い頃の両親と、もう一人


父とそっくりな顔の男の人が写っている


・・・双子?


見れば見るほど父にしか思えなくて
十二年前の記憶を必死に引っ張り出す


「これが・・・俺」


その指が示したのは母の隣で笑っている父だった


「・・・っ、違っ、だって」


それは亡くなった父


「ごめん」


「その“ごめん”は、なんのごめんですか」


酷く混乱する頭を落ち着けようとすればするほど

込み上げてくるものを抑えられず
返事を待つことなく涙腺が崩壊した


怪我を庇うようにフワリと抱きしめてくれた向日葵さんは


「なによ、なんで花恋を泣かすのよ」


私を包みこむようにして背中を撫でる


どうしてこのタイミングなのだろう
向日葵さんの部屋を訪れた、今日じゃなきゃだめだったのだろうか


真実を知りたいのに
聞けば真実が変わりそうで怖い


それなのに


私のベースが



ルーツを聞け、と囁いてくる


聞きたい


聞きたくない



知りたい



怖い



躊躇う私の背中を押してくれたのは
私を抱きしめ続けている向日葵さんだった


「よし、花恋。聞こう」


「・・・」


「花恋には、いつも笑っていて欲しいの
だから、聞いて気持ちを切り替えよう」


向日葵さんは、太陽に向かう花そのものだ


「・・・はい」


「よし、じゃあ、ソファに移動しよう」


ゆっくりと立たせてくれた向日葵さんは
二人掛けのソファに手を繋いで座ってくれた


「まずパパが説明して」


泣いているカズヤさんは無理だと思ったのだろう
向日葵さんはお父さんを指名した


「そうだね」


うんうんと頷いたお父さんはカズヤさんの隣に腰掛けると


「泣き過ぎだろ、和哉」と笑った


それに「すみません」と頭を下げたカズヤさんは


「よろしくお願いします」
さらに何度も何度も頭を下げた