「いらっしゃい花恋ちゃん。退院おめでとう」


二度目の訪問は向日葵さんのご両親が玄関で迎えてくれた


「ありがとうございます
怪我の時にお世話になったと聞きました
お礼が遅くなってすみません
本当にありがとうございました」


「お礼なんて良いのよ花恋ちゃん
逆に間に合わなかったことを詫びるのはこっちなのに、ねぇ大ちゃん」


「あぁ、そうだね
痛い思いをさせてごめんね」


お二人の所為じゃないのに謝られるという居心地の悪さに頭を何度も下げていると


「だから、玄関で延々する話?」


お兄さんがそれを止めてくれた


「ごめんね花恋ちゃん。さぁ上がって
向日葵にはまだ言っていないから驚くと思うわ」


サッとスリッパを出してくれたお母さんにお礼を行って慎重に靴を脱いだ


お兄さんが半歩前を歩いてくれて
二度目の向日葵さんの部屋に着いた


コンコン
控えめにノックすると直ぐに向日葵さんの声が聞こえた


「は〜い」


扉が開いた瞬間


「花恋っ」


目を見開いた向日葵さんが飛び込んできた


「ゔぅ」


「あ、ごめん、花恋っ」


慌てて離れてくれたけど
ダメージが大きかった


「ちょ、花恋ちゃん大丈夫?
ほら、向日葵退いて」


お兄さんは、まるでどこが痛いのか知っているかのように
ギプスがある左側を支えて部屋の中へ移動するとソファに座らせてくれた


「花恋ちゃんどぉ?痛い?」


「いえ、もう大丈夫です」


「ほら、向日葵は謝って
花恋ちゃんは退院したばかりなんだから」


「ごめんね花恋、嬉しくて、つい」


泣き出しそうな向日葵さんの顔を見れただけで十分


「もう大丈夫ですよ向日葵さん」


「ごめんね」


「はい」


「じゃあ僕は母さんにお茶をお願いしてくるね」


「お兄さんもありがとうございました」


「いいえ、どういたしまして」


物腰が柔らかくて笑顔も満点
王子様と呼ばれるに相応しいオーラのあるお兄さん


・・・実は、人外かも

フフとほくそ笑む私に
「え、なになに、何がおかしいの」
向日葵さんは食い気味に迫ってきた


「いえ、向日葵さんのお兄さんが王子様みたいで
密かに人外かと疑いました」


「あ〜、王子様なワケないわよ
あれはあくまで表の顔だからね
てか、朝陽のことなんてどうでも良いの
花恋はどうして?退院して家に来たってことは
しばらく家で一緒に暮らすってこと?」


「えっと、違うんです
今日は大切な話があって」


「・・・え、なに、大切って」


背筋を伸ばした向日葵さんに身体の向きを合わせる


「ハッチのことです」


「駄犬がどうしたのよっ」


向日葵さんは一瞬で不機嫌になった