「夏らしい元気が出るカラーね」


黄色をメインにオレンジと白を加えて作ったブーケは
綺麗なグラスを器にテーブルに飾られた


高校生の私にできるお金をかけないプレゼントは沢山褒めてもらえた


「先ずはお茶にしましょう」


「私、お手伝いします」


「そう?じゃあお願いしようかな」


並んで立つキッチンはリビングルームとの隔たりがないことで理事長や白井先生とも会話が繋がる


「花恋ちゃんはフルーツをカットしてね」


「はい」


大きなグラスにクラッシュ氷とカットフルーツを入れ
アイスティを注いで最後にミントの葉を乗せる


「フルーツインティー。お友達と飲んだのが美味しくてね
花恋ちゃんと飲みたかったの」


奥様は少女漫画の主人公みたいに可愛らしい雰囲気
現に花柄のワンピースに真っ白のフリルつきエプロンを着けているだけで
どこを切り取っても絵になる


「美味しそうです」


「最近の私のブームなのよ」


グラス四つをトレーに乗せて
ソファ前のテーブルに運ぶ


奥様の趣味だという手編みレースのコースターに乗せると涼しげでカフェにいるみたい


「写真を撮っても良いですか?」


「おっ、使いこなせてるね」


理事長も撮りたいとスマホを取り出した


「花恋ちゃん。私もお友達にしてね」


「是非よろしくお願いします」


【白井小百合】


「“奥様”なんて距離を感じちゃうから小百合って呼んでね」


と言う小百合さんの優しさに触れて
また一人友達が増えた


沢山お喋りをしてお昼ご飯の支度を手伝ったり
お庭の花いじりからまたお喋りへと
こんなに穏やかな一日を過ごしたのは初めてで

両親が生きていたらこんな風なのかな、なんて胸が熱くなった


「花恋ちゃん、髪はどこで切ってるの?」


二年間外出してこなかった話しで小百合さんは目を丸くした


「寮母の間宮さんが昔美容師さんだったそうで」


腕試しという優しさに甘えて切ってもらっている


「花恋ちゃんによく似合ってるわ
フワフワで本当可愛い」


肩につく程度の長さのボブは緩い癖毛のお陰か褒められることが多い
綿飴みたいとしょっちゅう撫でてくれる向日葵さんと同じで最近よく撫でられる


「うちは息子二人でつまんなかったから
花恋ちゃんが来てくれると華やかで楽しいわ」


小百合さんに“つまんない”と言われているのに


「本当。花恋ちゃんが妹なら良かったのに」


褒めてくれる白井先生は素敵な息子さんだと思う


「浩一。学校では間違っても“花恋ちゃん”なんて呼ばないようにね
花恋ちゃんが疑われて嫌な思いをしないとも限らないんだから」


「その辺は心得ていますよ、母さん」


理事長家族と過ごした日曜日は、とても気持ちの安らぐ一日になった