「することないなぁ」


本当なら今頃、獣人だと知りながらもシルバーウルフと恋に落ちたファンタジー小説の続きを読んでいたはずなのに


あのイケメンさんに図書館を譲ってしまったから


・・・することがない


だからと言ってイケメンさんの折角の睡眠を邪魔するほどかと聞かれれば


「違うんだけどね」


自室の椅子に腰掛けて窓の外に見える空を眺めてみる


机の上には栞の挟まったファンタジー小説


図書館に行かなければ読めない訳じゃない
だって手元にあるんだもの

でも・・・

図書館に拘るのは、あの雰囲気と空気感と
なんというか・・・


図書館特有の匂いが好き

それもあって特権を貰ってから自室で本を開くことはなくなった

ただ、読みかけの本を誰かに借りられる訳にはいかないから
こうやって毎回持って帰るんだけど


ウジウジ考えても仕方ない


お昼ご飯を食べてから
もう一度行ってみよう


元々お昼には戻るつもりだったし
今日はお昼から図書館へ行くつもりだったと考えることにしよう


とはいえ現在十時を過ぎたあたり


「することないなぁ」


何度目か分からない呟きのあと
椅子から立ち上がってベッドに転がった


寝心地に拘ったというダブルコイルのマットレスに包まれて


気がつけば眠っていた



コンコン
「お昼ですよ」


扉をノックする音に飛び起きて壁の時計を見て目を見開く


「二時間も寝てた」


することがないとため息を吐いた癖に
気がつけばお昼なんて


自堕落にも程がある


お昼の支度を手伝えなかった焦りもあって大慌てで食堂へ向かった