「「っ!!」」


望みの家での癖が抜けなくて
無意識に取った行動も

息がかかるほどの近さに二人同時に息を呑んだ


「ちょ、おま、っ、え、」


それにいち早く反応して身動ぎしたハッチに頬を挟んでいた手が離れた


「・・・いや、ハッチが、熱があるのかと思って」


「・・・そ、そうか」


「良かった、です。熱はなさそうで」


じゃなくて・・・


頭の天辺から熱が放出されるみたいに身体中を熱が駆け巡る


熱があるのは私の方だ


「花恋?」


近すぎる距離を広げるために
ジワリと後方に下がる


そのことに気付いたハッチは
私の腕を掴むと強く引き寄せ


「キャッ」


せっかく離れた距離がゼロになった


「・・・ハッ、チ」


「離れんな」


少し低い声が耳から入ると身体に甘い痺れが走り


あり得ない速さで打っていた鼓動が
更に速さを増す


クラクラするほどに身体中の熱が沸騰するなか


「・・・っ」


私と同じくらい強く打つ
ハッチの鼓動に気付いてしまった


だって


ハッチの腕の中に隙間なく抱かれている身体は、丁度胸の辺りに頬が触れていて

同じように触れている耳からダイレクトに届いているんだもの





もう・・・苦しい




よく分からない感情が溢れてきて


なぜだか無性に泣きたくなった


ただでさえ熱い顔に鼻の奥がツンとして
さらに目頭も追い打ちをかけてきて


迫り上がってきたそれに抗うことはできなかった




「・・・どうした、花恋」



突然震え始めた私のことにいち早く気付いたハッチは
抱きしめたままゆっくりと頭を撫でる


口を開いたら声をあげて泣きそうで
頭を振るしかできない


そんな私を宥めるみたいに


背中を支えている大きな手も
トントンとリズムを刻み始めた


・・・なんでだろう


ハッチと会うたび私の思考も身体も忙しい

イケメンだけど遅れると文句を言うし
許可もしていないのにスキンシップも多い
写真集ばかりを見ている癖に難読漢字は最も簡単に答えてくれる

でも“三年間Dクラスだった”とケラケラ笑うハッチ


出会ってひと月も経っていないのに

なにより嫌じゃない


寧ろ、ハッチとの時間は心地よくて


困る


現に今も


よく分からない感情に押されて


良い匂いのするハッチのシャツを涙で濡らしているのだから