思ったより話が早く終わったこともあり、予定通り教室で試験を受けることにした


「向日葵さんも一緒に此処で受ければ良いのに」


手を繋いで歩く来飛君はハッチに似て過保護らしい


「間に合うから平気」


それを受け付けない頑固なところも父親譲りなのだろうか


「かもね」


「・・・っ」


恐る恐る来飛君を見上げるとクツクツと笑っているのが見えた


・・・もしかして、来飛君も


なんて妄想は

「クッ、飽きないねぇ」


読心術の使える人外兄弟にはお見通しだったようで


「花恋ちゃんって可愛いから、全く年上に見えないや」


仕舞いには弄ばれるという辱めを受けながら、笑っているうちに教室に着いた


「来飛君ありがとう」


繋いでいた手を外そうとしたのに、ギュッと握り直した来飛君はそのまま教室内へ入った


騒ついていたはずの其処は来飛君が姿を見せた途端に静まりかえった


「・・・っ」


男子生徒は殆どが立ち上がって頭を下げている
数少ない女子生徒はちょうど教室の中央辺りに集まっていて、チラチラと目が合う

その視線の鋭さに嫌な予感しかなくて、手を繋いだままにしてくれる来飛君が有り難かった


その重い雰囲気を破ったのは立ち上がって手を振る向日葵さん


「花恋っ」


その声に誘導された来飛君は「行こう」と私の手を引いた


「おはようございます」


入院していた時に聞いた通り、窓際の一番後ろになった向日葵さんの席の前に来飛君は鞄を置いてくれた


「待ちくたびれちゃったじゃない」


頬を膨らませても向日葵さんは可愛い


「お待たせしました」


久しぶりの教室は向日葵さんが居なければ逃げ出したくなるような重い空気が漂っている


「で?来飛はなんで花恋と手を繋いでんのよ」


「花恋ちゃんが小さいから迷子になると困るからね」


舌を出して笑う来飛君は笑顔で回避する特技がありそうだ


「それもそうね」なんて頭を撫でてくる向日葵さんは


「お帰り、花恋」


フワリと抱きしめてくれた


「ただいまです」


「フフ」


漸く戻った日常に頬を緩めた