三年D組は男子二十五名女子十名の
三十五人クラス

小中も含めたこれまでは出席番号順で席が決まっていた

青山という苗字もあって毎回廊下側の一番前の席

今回もそれを疑わなかったのに
教室に入って早々その席に男子生徒が座っている姿を見つけてしまった


疑問に思いつつも、一斉に視線を集めてしまった居心地の悪さから逃れるように

黒板に貼り出された座席表を確認するべく教卓へと近づいた


「・・・っ」


驚いたことにこのクラスは窓際から五十音順に並んでいて


私の席は窓際の一番前


恐る恐る窓際の席に近づくと、机の上に[青山花恋]という書類が並んで見えて

間違っていないことに安堵した


それにしても・・・


怖い



クラスの大半の男子生徒の髪は
なにをどうすればそうなるのか疑問しかないカラフルなもの


女子生徒は目の周りが強調されたメイクと発色の良い髪色、着崩した制服もギャル雑誌に出てくるモデルさんのよう

一転、ノーメイクに地毛。購入したままの模範的な制服の自分


私・・・このクラスに馴染めるだろうか?

東白学園に在籍して三年目
Sクラスは一般クラスと校舎が離れているとはいえ
私は一体何を見てきたのだろうか・・・

机上に並んだ書類や教科書を見ているはずの視界は焦点を絞りきれないまま


気になるのは騒然とした教室内ばかり


そんな中、八時半から始まるHRギリギリで一人の女子生徒が入ってきた


それまで騒然としていた教室は一瞬で水を打ったような静けさに包まれた


生徒の視線を一身に受けているはずなのに

全く動じないその子は真っ直ぐ私の前まで近づいてきて一つ後ろの席に座った


・・・っ


私と同じ模範的な制服に身を包んでいるのに
触れたくなるような黒髪と引き込まれるような切れ長の瞳


間違いなくカーストの上位者に与えられるオーラを纏っている


どうしてそう思うのかは
なによりシンとしたままの教室が証明していて

知らないうちに力が入っていた身体に気づいた

自分を宥めるように息を吐き出すと同時に泣きそうになった




・・・私、やっていけるかな



教室に入って数分で後悔ばかりしていた