「嘘、信じられない」


玲香は洋子の言葉に聞く耳を持たない。
不穏な空気がふたりを包み込んで行く。


「ちょっとふたりともどうしたの」


クラスメートたちは突然の喧嘩に慌てて止めに入るけれど、ふたりの耳には入っていない。


「私のことこんな風に思ってたんでしょ!?」

「思ってないってば! 玲香こそ、私のことバカにしてるんでしょ!」

「はぁ? 意味わかんないんだけど!」


ふたりの口喧嘩はどんどんヒートアップしていく。
互いに譲る気もないようで、その内容は過激化していく一方だ。

周りの友人たちも最初は止めようとしていたけれど、あまりに話を聞いてくれないので距離を取り始めていた。
このまま近くにいたらふたりの喧嘩に巻き込まれてしまうかもしれない。


「あんたなんて大嫌い!」


玲香が両手でバンッ! と自分の机を叩いて怒鳴った。
教室全体が静まりかえる。
洋子が引きつった表情で玲香を睨みつけた。


「こっちだって大嫌い! 玲香とは絶交だよ!」


洋子はそう吐き捨てると、玲香に背を向けたのだった。