「うっ……ひっく」


短く声をあげて肩を震わせる。
どうにか涙を出そうと思ったけれどうまくいかなくて、胸ポケットからひそかに取り出した目薬を使って涙を演出した。


「雛ちゃん!?」


ただ事ではないと感づいたのか、浩二の声色が変化する。
私の体をどうにか引き剥がして「なにがあった?」と顔を覗き込んでくる。


「あちこちに砂がついてる」


浩二が私の頬を汚れを素手でぬぐってくれる。


「豊が……」


しゃくりあげながらなんとか声を振り絞る。


「豊? 豊がどうしたんだよ? 今日は部活だろ?」


私は左右に首をふる。


「放課後に、豊に呼び出されたの」

「え?」

「校舎裏に。それで、いきなり襲ってきて……」


そこでまたしゃくりあげて両手で顔を覆った。
もうなにも話せないというように体全体を震わせる。