弥生はまるでイジメのリーダーにでもなったように、結への悪口をまくし立てている。
それは本人にも聞こえているけれど、弥生はまるで配慮する気配がなかった。

弥生はあくまで被害者という立場で話をしているから、周りもそれに同調しやすい。
正義を振りかざして攻撃する悪魔。

そんな言葉が浮かんできた。


「玲香、ジュース買ってきて」


教室後方からそんな声が聞こえてきて視線を向けると、洋子が玲香を顎で使っているのが見えた。
玲香はなにも言い返さずに黙って教室を出ていく。

その様子を見ていた洋子と洋子の仲間たちがクスクスと笑う。
こちらも正義を振りかざした悪魔だ。

カンニングを要求していたという玲香はたしかに最低だ。
だけどそれを拒絶しなかった洋子だって同類だと思う。

それでも話し方によっては洋子が被害者になる。
どんどん崩れていく人間関係を見ても私はなにも思わなかった。