私の前に座っている母親がこちらを気にして微笑みかけてくる。
いい加減、父親から勉強勉強と言われる毎日に嫌気がさしていることに気がついてくれているみたいだ。

でも、父親はそんな母親を睨みつけた。
大きな音を立てて箸を置くと「なに言ってるんだ!」と威圧的に怒鳴る。
私も母親も、その声にビクリと体を震わせた。


「今がいちばん大切な時期だろ。遊んでる暇なんてないはずだ!」


私の父親は昔気質な人だ。
自分が親にされてきたことを、そのまま子供にしている。

怒鳴っても殴っても、結果的に感じるのは不快感だけなのに理解していない。
怒鳴れば人は言うことをきくと思っているのだろう。

だけど、怒鳴らないということを聞いてくれないのなら、それは父親に信用がないからだと私は思っている。


「わかりました」


母親は仏頂面になって父親の言葉を聞き流す。
それが気に入らなくて更に父親の小言は増えていく。

楽しいはずの朝食が、どんどん暗く沈み込んでいき、最後にはご飯の味もわからなくなっていく。
黒いドロドロとした感情のヘドロが、私の中に溜まっていく。