「でも……」
「いいの、いいの。それに珠莉もほんとは会いたいんでしょ?ここは南駅前だし、すぐ来てくれるでしょ」
「なっ、」
そんなこと言わないでよ……!
柊磨に聞えちゃってるじゃん!
勘違いされちゃうよ……!
またしても芙実はニヤニヤしながらこちらを見ている。
絶対にわざと言ったなあ……。
『じゃあ、あとで迎えにいくから』
先程の拗ねていた口調とは打って変わり、嬉しそうな弾んだ声が聞こえてきた。
「あっ、ちょっとまっ―――」
わたしが断りの言葉を発する前に切られてしまった。
そして、すぐに【今から南駅前に行くから待ってろ】というメッセージが送られてきた。
「もう!芙実!」
ちょっと怒ったように彼女を見れば、彼女は悪びれる様子もなく、ニヤニヤと頬を緩めていた。
でも、しばらくして飲みかけのフラペチーノに一度視線を落としてからもう一度真っ直ぐにわたしを見つめる。
「だって、自分じゃ絶対会おうとしないじゃん。そりゃあ暴走族っていうのは気になるけど、それよりも珠莉がわたし以外の前であんなふうに楽しそうに笑ってるの久しぶりに見れて嬉しくなっちゃって。意地悪してごめんね」
そういえば、わたし芙実以外の前で久しぶりにちゃんと笑っていたかもしれない。



