そんなのほとんどの人が声を掛けるくらいで終わるのに荷物まで持って送ってあげるなんて、あれが優しさじゃないって言ったら他の人はどうなるのか。
見た目だって髪が黒髪じゃないのと耳にピアスがついているだけで、あとはただの顔が整った学生。
とてもじゃないけど、喧嘩をしたりする暴走族になんかは見えない。
きっと彼は困っている人がいたら放っておけない心優しい人なんだと思う。
わたしだってその“困っている人“に入ったんだろう。
「珍しいね。珠莉がそんなふうに言うの」
「え?」
「いや、珠莉はいい子だけどあのことがあってから異性のふうに言ってるのあんまり聞いたことないなあって思って」
確かにわたしは異性を特別視することをやめたからわざわざ言葉にして誰かに伝えることもなかった。
「別に好きとかじゃないからね」
「ふふ、それ逆に怪しいよ」
ニコニコと嬉しそうにわたしの腕をつんつんとしてくる。



