「まあ、“まだ“他人ってことはその先があるってことだし」
わたしの言葉なんて聞きもせず、本人はあっけらかんとして俺にも可能性があるな、とか何とか言って笑っている。
でも、わたしはそれどころじゃない。
尋常じゃないくらい心臓がバクバク言ってるし、顔も、吐息の触れた耳も熱い。
ダメだ。こんなのズルい。
もっと、もっと頑丈に、丈夫に誰も入ってこれないように心に壁を作らなくっちゃ。
傷つかないように、守れるのは自分だけ。
何度も心の中でそのことを繰り返して、言い聞かせる。
「わ、わたし帰るね。明日も学校だし」
「珠莉」
突然、名前を呼ばれて振り返ると、さっきまで笑っていたくせにわたしを見るその瞳は真剣味を帯びていて、目を逸らせなかった。



