「嘘ついても騙されねえからな」
その言葉と同時にわたしの手を掴んでそのままポケットに入っていたスマホと無理やり取り出すと、「パスワードは?自分で開いて」とスマホを手の上に乗せられる。
なんか前から思ってたけど、すごい強引だ。
気づいたら彼のペースに飲まれている。
「あの、パスワード忘れたって言ったら?」
「顔で開くだろ」
そうですよね。
最近のスマートフォンはすごいですもんね。
文明の発達って恐ろしい。
だけど、顔認証で画面を開けることができることを知っているのにわざわざわたしにパスワードを入力させるところが嫌いになれないところだ。
ちゃんと、わたしが完全に断れる状況をいつでもくれる。
なんだかんだ言いながらもわたしにちゃんと選択の権利をくれるんだ。
今ここでわたしに残された逃げ道はないと観念し、顔認証で画面を開いて、その状態のまま彼にスマホを渡した。
すると、自分のスマホも開いてサクサクっと慣れた手つきでアプリにわたしの連絡先を追加し、なぜか電話帳に電話番号まで入れてわたしに返してきた。
「これでいつでも連絡できるな」
自分のスマホに映るわたしとのトーク画面を見つめ、上機嫌でニコニコと笑っている柊磨。
なにがそんなに嬉しいのかな。



