「サンキュ。じゃあまずそのウィッグとカラコン外してきて」
指がさされている先に洗面所があるのだろう。
こくり、と頷いて素直に洗面所へと向かい、偽物たちを慣れた手つきで外していく。
鏡に映っているわたしからどんどん偽物が外れていき、段々と本当のわたしの姿へと戻っていく。
「いつ見ても目立つな……」
ぼそりと呟いた声は静かな部屋に消えていった。
柊磨の待つリビングのような部屋に戻ると、彼はソファに座っていてわたしに気がつくと、ぽんぽんと自分の横を軽く叩いて合図してくる。
ここに座れってことなのかな。
そう思い、移動して指示された通り、彼の横に腰を下ろした。
「やっぱりこっちの方がいいな」
わたしの金色の髪を掬い、心底愛おしそうに目を細めて笑う。
その仕草にドクン、と鼓動が甘く高鳴り顔が熱を持ち始めた。
金髪の方がいいなんて、変わってる。
普通は目立たないウィッグのような黒髪を好む。
しかもきっと彼はこれが染められたものではなく、地毛だということにも気付いている。
「……そんなこと初めて言われた」
みんなわたしのことは“可哀想”だというような目で見て、腫れ物のように扱ってくる。



