しばらく走って、バイクが停まったのは3階建ての少し古びた年季の入ったビルだった。
こんなところになんの用が……?
柊磨がヘルメットを取ったからわたしも慌ててヘルメットを取った。
彼は慣れたようにバイクから降りると無言で手を差し出された。
「な、なに?わたし何もあげれるようなものなんて持ってないよ」
バイト終わりだし。
ていうか、考えてみたら今のわたしのコンディションって最悪じゃない!?
仕事終わりでどうせバイトだけだからと思ってメイクも適当だし、不自然ではないけどウィッグ被ってるし、この前のバッチリ決めてるわたしとはまるで違う。
いや、初めて会った時はバイト中だったし今とそんなに変わらない恰好……むしろ泣いてしまったから今よりも酷い顔だったかもしれない。
そもそも、わたしの身なりなんてどうでもいいのになんでわたしはこんなにも気にしてしまうんだろう。
ちょっとでも可愛く思われたい、なんてこんなのまるでわたしが柊磨のこと好きみたいじゃん!
ありえない、ありえない、あってはいけない。
それにまだ会って3回目だし。ないない。
わたしはもう恋なんてしないし、自分の将来に期待はしない。
誰かを好きになるなんて、諦めざるを得ないことだと身をもって知っている。



