「珠莉」
鐘の音が鳴り響く中、愛しい人に名前を呼ばれてそちらに視線をやると、そっとわたしの左手を手に取って持ち上げた。
「俺の残りの人生、全部お前にくれてやるよ」
「え?」
「だから、お前の残りの人生を俺にくれないか」
キュン、と鼓動が甘く高鳴る。
とろけてしまいそうな程、熱を持った緋色の瞳に見つめられれば、もう離れることはできない。
それってプロポーズってこと?
きっと今すぐにってことじゃないんだろうけど、いつか……いつか柊磨と家族になれる日が来たらいいな。
「全部あげるから、一生大事にしてね……っ」
そういうと、まるでわたしの言葉に返事をするかのように柊磨は極上に甘く優しい笑顔を浮かべ、再び頬を伝う涙を親指でそっと拭う。
整った綺麗な顔がゆっくりと近づいてきて、彼のサラサラな深い赤の髪がふわりと揺れる。
そして、満天の星の下で月夜に照らされた愛おしいふたつの影が重なった。
end.