亜須香さんが住んでいるのは隣県でわたしたちの住んでいる街からはバイクで一時間くらい走ったら着く距離だった。
「どこで待ち合わせしてるんだっけ?」
「海沿いにあるカフェに来いだとよ」
柊磨が亜須香さんに何年かぶりに連絡を取ると、すぐ返信がきたそう。
やっぱり、二人を信じてずっと待ってたんだろうな。
「そろそろ行くか」
駐車場にバイクを停めて、待ち合わせ場所のカフェまで歩く。
潮風が髪をゆらりゆらりと揺らす。
少し歩くと、小さな波がキラキラと太陽の光を照り返し、澄み渡るようなどこまでも青い海が目の前に広がっていた。
「……綺麗」
思わず、口から声が漏れた。
普段ならうるさいと思うセミの鳴き声さえ、この景色に溶け込んでいてそんなこと気にならなかった。



