「珠莉……!」
世界で一番愛おしい人が名前を呼んでくれる声が聞こえたけど、今その視界に映してしまったらまた泣いちゃいそうだったから目を開けられなかった。
その瞬間、ふわりとあたたかいものに体が包まれた。
───ゴンッ
鈍い音が聞こえたはずなのにいつまで経っても痛みを感じない。
恐る恐る目を開けると、そこには額から血を流している柊磨がいた。
「柊磨!?」
「あっぶねえ……ハアハア」
わたしのほうまで走ってきたのか息を切らしている。
「大丈夫!?」
血が、血が出てるよ。
なんでわたしなんかの為に……。
柊磨の手が伸びてきて、さっき後堂に殴られた箇所をすりっと優しく撫でた。
「お前を守れるならこれくらい痛くない」
そう言って笑う柊磨はいつもとはどこか違っていた。



