「それに、俺はお前のこと殴れねえよ」
その言葉にハッと目を大きく見開いて理希くんは視線を下に向けた。
「……俺といたらまたみんなが酷い目に遭うんだ」
ぼそり、と呟かれた言葉は少し遠くから二人を見ている後堂には聞こえていないだろう。
「そんなの気にすんな。俺が全部守ってやるから。だから……お前は安心してここを抜けろ」
その言葉に理希くんの瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。
「しゅう、にい……っ」
涙を流す理希くんの頭の上にぽん、と手を置いた。
ああ、仲直りできてよかったね。
ちゃんと素直になれて本当によかった。
わたしまで胸がじーんと熱くなってきて涙が頬を伝った。
「おい、誰も抜けること許してねえぞ」
黙ってみていた後堂が二人の様子がおかしいことに気づき、金属バッドを片手にわたしの前まで歩いてきた。



