そんなことして何になるっていうの。
恨んだって何も変わらないのに。
「睨んでも泣いても助けてなんてやんねえよ。恨むならお前を選んだ赤嶺を恨むんだな」
「……わたしは柊磨を選んだこと後悔してない。どんなに危険な目に遭おうとわたしには柊磨が必要だから」
「そういうのうざいから」
その言葉と共に頬に鈍い痛みが走る。
口の中に鉄のような味が広がる。
「珠莉さん!」
理希くんがわたしの名前を呼ぶ声が耳に届き、後堂がもう一度わたしに向かって拳を振り上げた瞬間、理希くんが後堂の腕をがしっと掴んで止めた。
「……彼女には手を出さないでください」
後堂はその手を振り払うと、彼の顔を勢いよく殴った。
「うっ……」
「理希くん……!」
殴られた彼の口元からじんわりと血が滲んでいる。
どうしてわたしを庇ってくれるの?



