俺はすぐにでも病院へ行きたかったが、理希が目覚めるのを待った。
『理希……』
身体を軽く揺らすと、ピクピクと瞼が動いた。
『んん……柊兄?』
ゆっくりと目が開いていき、その瞳に傷だらけの俺が映った。
『起きたか……亜須香が危ない状態なんだ。すぐに病院に……』
『……は?亜須香が……?!』
慌てて起き上がり、走り出した理希の腕を掴んで呼んでおいたタクシーに乗り込んだ。
『おい、離せよ!』
『西町記念病院までお願いします』
『かしこまりました』
動き出したタクシーの中で理希は黙って俺を睨んできた。
今は兄弟喧嘩をしている場合じゃない。
それを彼もわかっているのか何も言わない。
ただ、お互いの手が微かに震えていた。
病院に着いて、医者から言われたことは“大変危険な状態に変わりはないが一命は取り留めた。だけど額に傷が残るだろう”ということだった。
額に傷が残る……。
年頃の女にとってそれはあまりにも残酷な現実かもしれない。



