そっか。俺の幸せは全部壊れてしまったんだ。
もう戻らない。
戻せない。
その時、初めて父さんが本当に死んでしまったのだと実感したのだ。
いつもならこんな時はあったかくて大きい手が俺の頭をくしゃりと撫でてくれるはずなのにその手はどこにもない。
『父さん……っ』
葬式場の隅で一人泣いていた俺の頭にそっと大きな手が添えられたことに気づいて顔を上げると、そこには優しい穏やかな笑顔を浮かべた老人がいた。
『だ、れ……?』
『わしはお前の父親と仲良くしていた者だ。お前さん、よかったらわしと一緒に暮らさんか』
その穏やかな声と優しい笑顔、何より添えられた手があったかくて俺は涙を流しながら自然と首を縦に振っていた。
そこからのことは正直あまりよく覚えていないが、俺はじいさんのところで暮らすことになった。
俺はただ理希が心配だったが、最後に会った時に『柊兄、嫌だよ。ずっと一緒って言ってたのに』と泣いて嫌がった理希に『迎えに行くから待ってろ』とだけ告げて慰めた。



