「じゃあ、行こっか」
椅子から立ち上がった珠莉と同様に俺も立ち上がって会計を済まして外へ出た。
駐車場に向かって歩いていると、そこに見覚えのある顔が見えて思わず立ち止まってしまった。
「柊磨?」
突然、歩みを止めた俺に振り返って不思議そうに名前を呼ぶ珠莉。
その男はこちらに気づくとポケットに突っ込んでいた手を片方だけ取り出してひょい、と上にあげてこちらに向かって歩いてきた。
「よっ、柊兄。元気にしてた?」
「……理希」
静かに口からこぼれ落ちた名前。
珠莉は何かを察しているのか何も言わず、少し先を歩いてきたのに駆け足でこちらまで戻ってきて隣に立った。
「俺が来たってことはわかってるよね?二週間後の夜19時にここに来い。逃げんなよ」
俺の手に住所の書かれたメモを置いた。
「理希、こんなことして何になるんだ」
「そんなの俺の方が聞きたいよ。柊兄こそ何がしたいの?俺がまだBlood Sharkに残ってるって知ったら自分で族まで作ってさ」
「それは、」
「それにもう新しい女なんか作ってさ、亜須香のことはもうどうでもいいだ。最低だな。じゃあ、またね」
不意に出されたその名前に無理やり塞いでいたはずの傷口が開くような感覚になった。



