「珠莉ちゃん、いい人見つけたね。幸せになるんだよ」
わたしが大好きだった優しい笑顔でそう言ってくれた。
まさかそんな言葉をくれる日が来るなんて思ってもなかった。
「ありがとうございます。寺嶋さんも幸せになってください」
いつものような貼り付けた笑顔じゃない満面の笑みを向けると、寺嶋さんは一瞬驚いてすぐ笑顔を浮かべて「ありがとう」と照れくさそうに言った。
ずっと、心から言えなかった言葉がやっと言えた。
これは嘘じゃない。
本心だ。
今はもう薬指にきらりと輝く指輪をみても胸が苦しくなったりしない。
だって、わたしには柊磨がいるから。
「赤嶺さん、珠莉ちゃんをよろしくね」
「はい。任せてください」
寺嶋さんは奥さんと合流すると言って去っていった。
「あの人、珠莉の初恋相手だったりする?」
寺嶋さんが去った後、パーク内を歩いているときにぽつりとそんな言葉が聞こえてきた。



