「珠莉ちゃんが暮らしている施設の職員の寺嶋といいます」
「そうですか、いつも珠莉がお世話になってます。彼女とお付き合いさせて頂いている赤嶺です」
ベンチから立ち上がり、寺嶋さんに向かってお辞儀をした柊磨。
そんな彼の態度に慌てながら驚いている寺嶋さん。
きっと、とんでもない不良に見えていたのかもしれない。
でも柊磨はそんな人じゃない。
きちんとご家族に礼儀を教わって育ってきたんだろう。
「彼女のことは本気なんですか?冷やかしなら……」
「本気です。俺には彼女しかいません」
「でも、」
きっと彼はわたしが何も知らないから無理だと言いたいのかもしれない。
「俺が彼女を幸せにしたいんです。たとえ家族を知らなくても」
ぽろり、と透明な雫が頬を伝った。
たぶん柊磨はわたしに呪いをかけたのは寺嶋さんだと気づいている。
それでいてわたしが傷つかないように温かい言葉をくれる。
「そうか……。俺が間違ってたのかもな」
柊磨の言葉に大きく目を見開いたと思ったら静かに目を閉じて小さな声でそう言った寺嶋さん。
そして、ゆっくりと目を開けてわたしを真っ直ぐに見つめた。



