「そんなこと言ってっとその口塞ぐぞ」
「なっ、またそんなこと言って……!」
「珠莉ちゃん?」
聞き覚えのあるその声に弾けたように視線を上げるとそこにはわたしに呪いをかけた張本人、寺嶋さんがいた。
なんでこんなところで、しかもよりによってこの人と会っちゃうのかな。
声を出したくても、動揺から言葉が出てこない。
寺嶋さんの視線はわたしではなく、隣にいる柊磨に向けられている。
奥さんはどこかに行っているのか今は彼一人だった。
「……その人が彼氏?」
こちらにずんずん歩いてきて彼が放ったのはその一言。
「そうです」
あの時は咄嗟に嘘が口から出たけど、今は本当に柊磨という彼氏がいる。
「……どなたですか?」
冷静にそう言った柊磨だけど、眉間にシワが寄っていていかにも不機嫌だ。
柊磨は寺嶋さんを知らない。
誰から呪いのような言葉を言われたのかはわたしも言っていなかったし。
今度、ちゃんと話さないとダメだな。



