自分じゃない人の体温に触れたのは久しぶりでそれに安堵したのか、ポタリ、とその手に我慢していたはずの涙がこぼれ落ちた。
泣いちゃダメなのに。
わたしは泣いても慰めてくれる人がいないから。一人でどうにかしなくちゃダメなのに。
そう思うのに堰を切ったように次々と溢れ出てくる涙を止める術がわたしにはわからない。
お客様がまだいるのに、とか頭ではわかっているのに涙を止めることが出来ない。
ただ、わたしの手を包み込むその温度がわたしには暖かすぎたのだ。
そしてそんなわたしを見て、彼は呆れるでもなく、取り乱すわけでもなく、そっと向けられた微笑みが心地よく、わたしを映す深い緋色の瞳が陽だまりのように優しくて全てを包み込んでくれているようなそんな気持ちになる。
「バイト、何時まで?」
「……ご、17時半です……っ」



