「あ、ありがとうございました。助かりました」
わたしも助けてもらったことに変わりは無いのだから彼に頭を下げる。
彼がいなかったら今頃騒ぎはもっと大きくなっていただろうし、わたしだってどうなっていたかわからない。
「大丈夫。もうアイツはいないから」
その言葉と共に頭に乗せられた手がわしゃわしゃとわたしの頭を撫でた。
突然のことに目を丸くして彼を見つめる。
どうしてわたしにはそんな砕けたように話すのだろう。
山田さんにはそんなことはなかったのに。
「どうして、」
「君だって怖かったんでしょ。こんなに震えてさ」
そう言ってわたしの手をすっと持ち上げると自分の手で包み込み、ぎゅっと握られた。



