え……?
状況が理解できずに固まっていると、
「仕返し」
そう言って、にやりと悪戯っぽく笑った。
キスされた、と頭で理解した瞬間、ぶわっと顔が熱くなる。
や、やられた……!
当の本人は上機嫌で鼻歌を歌いながらバイクに跨り、スイッチを押すと、ブロロロッとエンジン音が鳴る。
そのまますぐにヘルメットを被り、バイクが動き始め、わたしはいつものように彼の腰にぎゅっと手を回し、金色の髪が風に靡くのを感じながらそっと瞼を閉じた。
ありがとう……柊磨。
わたしのことを諦めないでくれて。
わたしが自分の心を守るための頑丈な分厚い壁と塀をどれだけ高く丈夫に積み上げても彼はよじ登って、なんの苦しみも見せずに「珠莉」と愛しい声で名を呼び、太陽のようなあたたかい笑顔を向けながらどうやってもわたしの元にたどり着いてしまう。
何度も何度も、隠れて逃げようとするわたしを必ず追いかけて、見つけては手を差し伸べてくれるのだ。
こうも簡単にほだされるつもりも惚れるつもりもなかったのに罪な男だなあ。
こうしてわたしに人生初めての彼氏ができた。