「お前には羽がある。お前はちゃんと飛べるよ、その羽で。んで、幸せになれる」
涙で滲んだ視界の先で、世界で一番幸せにしたい人が曇りのない、こぼれるような優しい笑顔を向けていた。
わたしは柊磨を選んでもいいのかな。
わたしもみんなみたいに幸せになれるのかな。
「……あ、りが、とう……っ」
何とか言葉を絞り出して、精一杯はにかんで見せた。
そんなわたしを見て、満足そうに笑うとそのままわたしをぎゅっと抱きしめて、泣きじゃくるわたしの頭をまるで小さい子をあやすかのように何度も優しく撫でてくれた。
しばらく泣いて落ち着いてから二人でバイクが停めてあるところへと向かった。
スマホを見ると、時刻は20時を過ぎていた。
芙実から【わたしは大丈夫だったけど珠莉は大丈夫だった!?このお礼はまた今度させて!】とメッセージが来ていた。
お礼なんて、わたしがいなかったら彼女は怖い思いをしなくて済んだのに。
【わたしは大丈夫だよ。芙実が無事でよかった】とだけ返信をしてスマホをポケットになおしてヘルメットを手に取った。
「なあ、珠莉」
ヘルメットを被る前に隣にいた彼がわたしの名を呼んだ。



