「でも、ずっと忘れられなかったんだから忘れらんねえよ」
「それでも、」
「俺は諦めねえ。好きでいるのも、お前にアピールするのも俺の自由だし」
わたしの言葉を遮って言った彼に、思わず顔を上げるとそこにはやる気に満ちた笑顔を浮かべている彼がいた。
どうして……どうしてすぐにいなくなってくれないの?
これ以上、一緒にいたらわたしだって耐えられない。
君との未来を望んでしまいそうになってしまう。
「ダメだよ。どう頑張ってもわたしは柊磨とは付き合えない」
「それでも俺は珠莉が欲しい。お前がどんなに自分を嫌いでも俺はもうお前以外見えない。つーわけで、これからも会いにくるから。またな」
自分の言いたいことだけ言って、わたしの頭を優しくぽんぽんとしてからヘルメットを被ってバイクのエンジンをかけた
。
きっと今わたしが彼にどんな言葉を投げかけても、うるさいエンジン音に全てかき消されてしまうのだろう。
本当に、ずるい。
わたしの意思なんて関係ないじゃん。
なんでそんなに真っ直ぐぶつかってくるのか。
黙ってバイクに乗る彼を見つめていると、一度だけ手をあげて柊磨は帰っていった。
「好き、なんて言えないよ」
ポツリとやるせなく呟いた言葉は誰に届くわけでもなく、街の中に消えていった。