「できてないじゃん」
「俺と付き合って欲しい」
わたしの言葉を無視して、わたしが一番聞きたくなかった言葉を口にした彼。
わたしなんか好きになっちゃダメなんだよ。
みんなからの信頼も厚くて、家族からも愛されていて、誰からも好かれるような君とわたしとでは不釣り合いだから。
生まれた時から何も知らない、誰かから無償の愛を注いでもらったこともない、ひとりぼっちで生きてきたわたしなんて選んじゃいけないんだよ。
幸せになることを望まれていないわたしとは違って、みんな柊磨の幸せを願っているんだから。
「ごめんなさい、わたしのことは忘れて」
どうか、わたしのことは忘れて幸せになってほしい。
そう思うのに胸がズキズキと痛むのはきっとわたしがこの人が欲しいと思ってしまっているから。
わたしはいつの間にか、特大の優しさをくれる柊磨を好きになっていたんだ。
数年前に捨てて、全てを諦めたはずなのに恋心というのは図々しいものだなあ。
手に入れちゃダメなのに勝手に好きになってしまうんだから。
こんな気持ちを抱いても報われないのに。
「……そうか」
わたしの言葉を聞いて、しばらくの沈黙の後にポツリと零された。
ごめんね、同じ言葉を言ってあげられなくて。
怖くて顔を下に向けているから彼が今どんな表情をしているかわたしにはわからない。



