嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~

 王都の屋敷に帰還したジョシュア。
 彼はマイアを早々に休ませ、いつも通り執務室へ向かった。

 ちょうど仕事を始めようとしたとき、アランが入ってくる。

「失礼します、ジョシュア様。面会希望者が」
「誰だ」

 面会を希望する者は珍しくない。
 公爵ともなれば、他の貴族や商人がしきりにやってくるものだ。

 しかし、今回の訪問者は異質なものだった。

「商人なのですが……ハベリア伯爵領からの商人ですね」
「デナリス・マードックか?」
「おや、ご存知なのですね」
「斥候からハベリア家ご用達の商人は聞いている。通せ」

 まだアランに支度金を払わない旨は伝えていない。
 ゆえに門前払いすることなく、面会を伺ってきたのだろう。
 むしろ好都合だ。

 支度金を催促しにきたのであれば、上手いこと利用してやろう。
 ジョシュアはそう考え、商人を面会に通した。